『藩政アーカイブズの研究: 近世における文書管理と保存』

作成者
国文学研究資料館編
出版者
岩田書院
刊年
2008

  平成21年3月に当館所蔵の明治・大正期の奈良県行政文書6,695冊が奈良県指定文化財に指定され、平成21年6月に「公文書等の管理に関する法律」が成立するなど、 公文書の管理が注目されています。今回ご紹介する本は、江戸時代の藩と村の文書管理の歴史を論じたものです。
  日本各地には江戸時代の文書が多く残っていますが、これは偶然に残ったものではなく、江戸時代から意識的に管理され、虫干しなど保存処置を施し、 代々引き継がれた結果です。江戸幕府と藩は村を武力のみで治めておらず、村からの訴えを受け入れる柔軟性の支配であったために250年以上続いたと言われています。 そのため公平な政治を行う必要があり、前例を参照するために文書の共有化を図ることを不可欠としていました。
  各藩は文書を管理する役所を設け、城内の櫓などに文書を保管し、文書目録を作成していました。文書量が多くなると、帳面に文書を挟みこむなど文書管理の効率化が 工夫されました。村でも藩に訴えるための訴状を作成し、証拠となる文書を管理する能力が求められました。 本書は、藩の文書管理に関する最新の研究成果と村の文書管理の研究史を紹介した一冊ですので、是非ご覧下さい。