『日本沈没 第二部』

作成者
小松左京,谷甲州著
出版者
小学館
刊年
2006.8

  日本列島が物理的に水没し、救助に奔走するなかで傷ついた小野寺を乗せたシベリア鉄道の中で、行きあった女性が生まれ故郷の 悲しい民話を語る。今から約40年前、大ベストセラーとなった小松左京『日本沈没』は、そんな印象的なシーンで幕を閉じています。 その直後には「第一部 完」とあります。
  近年、ようやく発行された『日本沈没』第二部は、沈没から25年を経た世界を舞台にしています。 沈没から逃げ延びた日本人は、各地で大小さまざまなコミュニティを作って暮らしいています。他国に間借りして存続している 日本政府の首相は中田。第一部では日本沈没の予見と脱出計画に大きな役割を果たした科学者です。故国を知らない世代が増え、 日本人としてのアイデンティティを失われていくのを恐れる中田は、大国の思惑に翻弄されるなか、各地に散った日本人を集住させ、 列島があった海域にシンボルとなるメガフロートを浮かべる計画を進めようとします。しかし、その過程で日本政府が所有する スーパーコンピュータ地球シュミュレータは、全世界に先駆けて地球規模の驚くべき寒冷化を予見します。
  第一部と同様、本書も群像劇の構成を取っており明確な主人公は存在しません。小野寺(小野田)や中田といった第一部の読者 にとってはなじみのある人物のその後が描かれると同時に、渡桜やワタリ准尉の姉弟といった沈没の記憶もない世代も活躍しています。
  本書あとがきによれば、10代半ばに昭和20年の終戦を迎えた著者は、その20年後に高度経済成長に浮かれる日本に違和感を持ち、 もう一度日本人に危機を直面させる中で、日本人とは何かを考るべく本書を構想したといいます。第一部とあわせてご覧ください。。