『名文で巡る阿修羅-天平の国宝仏-』

作成者
梅原猛ほか著
出版者
青草書房
刊年
2009.5

書名は「阿修羅」となっているが、サブタイトルに天平の国宝仏とあるように、昨年話題になった阿修羅像のみではなく、 興福寺の他の諸尊像や東大寺、新薬師寺、唐招提寺、法隆寺、聖林寺の各国宝仏も取り上げられている。
  諸尊像について語るのは、梅原猛から始まり、亀井勝一郎、岡部伊都子、白洲正子、井上靖、高村光太郎などといった著名な哲学者、 文芸評論家、随筆家、小説家、詩人。大和の仏像によせる各人の思いを、それぞれ味わい深い文章で綴っているのが本書の特徴である。 仏像の方も何がしか、著者の深い感性に裏打ちされた観察眼と心に響く名文によって、体内に秘めた魅力が引き出され、一層の輝きを増しているといえる。
  なお、本書は『名文で巡る国宝の仏像』シリーズの1冊として出されたもので、シリーズの姉妹編には十一面観音、弥勒菩薩、阿弥陀如来、 観世音菩薩、千手観音があり、各冊ともお勧めである。
  多忙な日々の中、時には悠久の時の流れに身を置く諸尊像に向きあい生み出された名文を思い起こしながら、 ひと時の心の安らぎを求められてはいかがだろうか。