日本人はお風呂好き、そんなイメージも違和感なく感じる私たち日本人。「一日の終わりは湯船につかって疲れをとる」をルーティンにしている方も多いのではないでしょうか。
本書タイトルにある浴場の主な利用目的は温浴、つまり温もりを浴びることで、風呂や温泉などの湯浴、サウナなどの蒸気浴がこれにあたります。さらには太陽光を浴びる日光浴、温められた石床に横たわる岩盤浴も温浴なのだそうです。
フィンランド在住の著者はかつて現地大学院でサウナ文化を探究した「サウナ文化研究家」。一つ一つの浴場文化を深掘りしていくと、それが生まれた社会や民族の個性が見えてくるのだと言います。本書はこの10年で巡った50を超える世界各地のユニークな浴場の歴史や文化的背景などを記した紀行文です。
タイの「オップサムンプライ」は、様々な有効成分を秘めたハーブを皮膚と気道から効率よく体内に取り込む方式で、女性の産後ケアから発展した蒸気浴。イスラム圏の「ハマム」は人々の信仰の日常に根ざした「清め」のための温浴習慣。世界中でブームとなったサウナの本当の姿を明らかにするフィンランド・サウナの進化史、そして多様な温浴スタイルが共存する「マルチ温浴大国」日本の浴場文化などもリアルな実体験とともに紹介されています。
後書きによると、風呂の最も原始的な意味は「恍惚」であるといい、そこから、苦行(儀礼や心身鍛練の場)、病気治療、清潔、享楽・くつろぎなどへと意味が分散していったのだそうです。世界に数多く存在する地域独自の温浴にもやはり人が共通して感じる、癒やされるような心地よさがあるのでしょう。
『世界浴場見聞録』
作成者
こばやしあやな 著
出版者
学芸出版社
刊年
2025.12