『中世イヌのくらし : 装飾写本でたどる』

作成者
キャスリーン・ウォーカー=ミークル 著 堀口容子訳
出版者
カルチュア・コンビニエンス・クラブ : 美術出版社書籍編集部
刊年
2025.2

 イヌはお好きでしょうか。人間にもっとも早く飼われた動物であり、その長い歴史のなかで、イヌは広い分野にわたって人間の生活の手助けをし、一番身近な動物として親しまれてきました。そんなイヌたちは、美しい中世の装飾写本にも様々な姿で登場します。
 写本とは、人の手によって書き写された書物のことです。ヨーロッパで活版印刷の技術が広まる15世紀以前には、書物は手書きでつくられていました。特に、絵柄や文様などで華やかな装飾がほどこされたものを装飾写本といいます。装飾写本の重要な役割のひとつは、キリスト教の教会や修道院で行う祈りの儀式を補助することであり、中世の人びとの祈りを支える実用的なメディアでもありました。また、膨大な手間をかけてつくられた装飾写本は、一級の美術作品としても現代に伝えられています。そうしたキリスト教にまつわる装飾写本の中には、挿絵や頭文字の装飾などに、さまざまな種類のイヌが描かれています。本書では大英図書館の装飾写本コレクションの中から、中世のヨーロッパで制作された装飾写本に描かれたイヌたちの絵とともに、中世の文献に登場するイヌにまつわる逸話が紹介されています。
 飼い主を戦場で守り、死んでも飼い主の遺体のそばを離れない忠犬の話。貴族にかわいがられ贅沢にくらす愛玩犬。イヌの名前や食事、飼い方、病気の治療法から、愛犬への哀歌、伝説や迷信といったものまで、美しい絵を見ながら、中世の人々のイヌへの想いや暮らしぶりを知ることができる興味深い内容となっています。
 イヌ派ではなく、ネコ派だという方には同シリーズの『中世ネコのくらし』もありますので、そちらも併せてご覧ください。