「芝棟(しばむね)」は、茅葺屋根のてっぺんに植物を植えて、棟を固める伝統的な技法です。実用的な技法ですが、屋根の上に草花がぴょこんと生えている様子は、かわいらしく興味を惹かれます。
日本国内で見学可能な芝棟83件のほとんどが東北、特に青森県と岩手県に集中していますが、大阪府にある日本民家集落博物館では、岩手県から移築された芝棟の民家「旧藤原家住宅」を、西日本で唯一見学することができます。「旧藤原家住宅」の屋根に生えているのはシランで、5月ごろに花が咲く様子が博物館SNSで紹介されています。元はイチハツという紫色の花をつける植物が植えられていましたが、大阪の暑さに耐えられず枯れてしまったため、シランに植え替えられました。地域によって植える植物に違いがあり、東北の太平洋側や内陸山間部では救荒作物であるユリやカンゾウ、ネギ、ニラなどが植えられています。関東平野部ではイチハツが植えられていることが多く、その萎れ具合で空気の乾燥度合いを測り、火除けの目安としていたようです。
実は芝棟は、物語やエッセイの中にも登場します。例えば『絵巻えほん11ぴきのねこマラソン大会』では、マラソンコースに芝棟の建物が小さく描かれていたり、牧野富太郎の随筆『植物一日一題』の中に収録されたエッセイ「屋根の棟の一八」では、イチハツの芝棟について語られています。
ほかにも、ヨーロッパ・フランスの芝棟や、デンマークの自治領フェロー諸島の草屋根など、様々な国の屋根の上に生い茂る草花たちが紹介されており、その国それぞれの建物との調和が目を楽しませてくれます。
緑が鮮やかになってきたこの季節、屋根の上にも目を向けて、草花を探してみてはいかがでしょうか。
『屋根の花園 : 芝棟・草屋根を日本と世界に訪ねて』
作成者
山口隆子 著
出版者
八坂書房
刊年
2025.4