『ネアンデルタール人再発見:科学が再構築した新しい人類史』

作成者
ディミトラ・パパギアーニ, マイケル・A.モース著 武井摩利訳
出版者
創元社
刊年
2025.7

 ネアンデルタール人は、私たちホモ・サピエンスに最も近い種であり、チャールズ・ダーウィンが進化論を発表する以前からその痕跡が発見され、150年以上にわたって研究が重ねられてきました。しかし、その長い研究の歴史にもかかわらず、彼らには「野蛮」「残忍」「文化的に劣る」といった固定的なイメージがつきまとっていました。
 本書ではまず、近年急速に発展している考古学の分析手法により、古い人類種のイメージが大きく塗り替えられつつある現状が紹介され、新たな発見や遺跡の具体例を通して、従来の理解がどのように更新されてきたのかが丁寧に示されています。そして、最新の研究成果をもとに描かれる姿は、これまでとは異なり、高度な道具を用い、仲間を気遣い、さらには骨に模様を刻むなど象徴的行為を行っていた可能性さえ示唆されています。また、なぜネアンデルタール人が絶滅したのか、当時のホモ・サピエンスと運命を分けたのが何であったのかという最大の謎にも踏み込み、劇的で単純な「滅亡」があったわけではなく、環境変動や人口規模、他集団との関係など、複数の要因が重なり合った結果と考えられていることが示されています。
 本書を読み終える頃には、ネアンデルタール人のみならず、さまざまな人類種が各地へ進出し、繁栄し、そして滅んでいった歴史について、これまで以上に多くの事実が明らかになりつつあることに気づかされます。同時に、なお解明されていない謎が数多く残されていることも実感させられるはずです。しかし何より、ネアンデルタール人が文化的にも精神的にも当時のホモ・サピエンスに極めて近い存在であったという認識が深まり、これまで抱いてきたイメージが大きく覆されるに違いありません。