『ザ・シークレット・ナンバーズ:数学の世界の知られざる先駆者たち』

作成者
北川ケイト,ティモシー・レヴェル[著];番由美子訳
出版者
KADOKAWA
刊年
2025.6

 私たち現代人は、世界が始まったときから無(ゼロ)が存在していたかのように感じがちですが、本来、人間はある程度成長してからでなければゼロという数を理解できません。ゼロの重要性がきちんと認識されるようになったのは、4世紀から6世紀のインドで、ゼロが歴史上に登場したのは、他の数よりもずっと後になってからでした。これは数学の歴史の一場面ですが、本書では、数学史研究者と数学博士号を持つジャーナリストという二人の著者が、より公平で人類全体を反映した歴史を正しく振り返り、あるがままの数学の物語を紡いでいます。
 ヨーロッパ中心の価値観や、女性が男性より軽んじられてきた歴史は、数学の世界においても例外ではありません。例えば、女性は数学を学ぶには「想像力が豊かすぎる」ため、かみ砕いた説明をしなければ理解できないという偏った考え方に基づき『淑女のためのニュートン主義』という本が1737年に出版されました。数学という学問は、想像力が不可欠であり、それが数学を学ぶうえで不利になることはありませんが、この書が大ベストセラーとなり、ニュートン力学普及のさらなる立役者となったというのは興味深いエピソードです。
 数学とは、情熱と創造性に満ちた真理の追究であり、人種や性別、国籍、さらには時代を超えて、さまざまな障壁を打ち砕いた人々の努力が詰まった学問です。本書は、混沌としていながらも、アイディアと人が連鎖のように発展してきた数学の姿を、物語として伝えてくれます。