『雪のうた』

作成者
左右社編集部編
出版者
左右社
刊年
2024.12

 積もった雪を踏みしめた時や手で押さえた時の「ぎゅ」という感じに覚えはありませんか? この本を手に取った時、そういう雪に触れた時の感覚を思い出しました。表紙をめくると、今度は粉雪のようにさらっとしたまっしろな紙が、さらに一枚めくると溶けかけた雪がアスファルトの上で少し汚れてにじんでいるような紙が現れます。本の姿に雪が存分に表現された本書が収録するのは、現代を生きる歌人100人がうたった100首の雪の短歌で、無垢なものとしての雪、静けさの象徴としての雪、春の訪れとともに去ろうとする雪のにおい――様々な雪が描かれています。たとえばこんな一首。

 クリームを雪に喩えて飾る日の雪になれない嘘あたたかい   toron*

 ショートケーキは年中食べるけれど、飾られた生クリームを雪として認識するのはクリスマスケーキだけですね。雪になれない嘘、溶けないあたたかい嘘とは果たしてどんな嘘なのでしょうか。
 図書情報館のある奈良市内ではあまり雪は積もりませんが、本書を通じて想像上の雪を楽しむのもよいかもしれません。