『日本の香:薫物 香木 香道 フレグランス 今につながる1500年の香文化と美』

作成者
日本香堂監修
出版者
誠文堂新光社
刊年
2025.4

 今年の正倉院展では、香木・蘭奢待が展示されました。足利義政や織田信長、明治天皇が求めたことでも知られる名香ですが、茶道や花道に比べると香道はややマイナーな存在に映りがちです。しかし、日本の香文化は1500年にわたり受け継がれてきました。本書は、現在まで連綿と続く香文化について紹介しています。
 日本における香の起源は1500年前、仏教伝来とともに中国から「清め」のための香木が伝わったことにさかのぼります。現代において「香り」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、花などの自然の香りや香水、アロマといったものかもしれません。香りが清めの役割を果たしていることは、現代ではあまり意識されていませんが、線香や焼香など、私たちは今も無意識のうちに香りを供え続けています。また、平安時代には着物に香をたきしめて楽しむ習慣がありました。これは、今日の私たちが柔軟剤や香水を選び、香りをまとう感覚にも通じています。
 他にも、「におい」という言葉が元来は色を示す視覚表現であったこと、香道では香りを鑑賞する行為に「聞く」という聴覚の語彙を用いることなど、独自の美意識として育まれてきた日本の「香り」を、歴史と文化の両面から解き明かしています。
 「香り」が日本人の生活や美意識に深く根付いた文化であることに気づかせてくれる一冊です。