働き方改革やワーク・ライフ・バランスが叫ばれて久しい昨今、休暇を取りやすい環境も整いつつあり、年次有給休暇の取得率は年々上昇しているそうです。厚生労働省の調査によると、働く人が付与された休暇のうち、実際に取得した日数の割合は令和5年には65.3%と過去最高を記録しました。
本書には年齢も職業も異なる著名人たちの休みに関するエッセイが収録されていますが、積極的に休みを楽しむタイプではなく、どちらかと言えば休むことが苦手な人たちの休みが綴られています。
例えば、インフルエンザ罹患にともない発生した5日間の休みに、ここぞとばかりに溜まっていた仕事や家事を片付けてしまうワーカーホリック気味の詩人。休みがないことが精神の平安をもたらしていると言うミュージシャン。休みを満喫している人の様子と自身を比較して焦燥感にかられる作家などが働き方や休むことへの思いを語ります。
そもそも「休み」がどういうものかを皆で共有できているのか、何をもって「休み」とするかが自分と他者ではズレているのではないか、と問うフリーライターは、順調に仕事が片付いて生まれた時間が自身にとっての「休み」になるのだと言います。
一方、意識的に「休む」ことをしてこなかったベテラン作家は、仕事の合間の一週間に旅に出たことで、閉じていた扉が開き、思考や言葉が流れ込んでくる感覚とともにある気づきを得ます。会社員との二足の草鞋を履き、「休みの日」は存在しないと言う小説家も、友人との久々の旅行を経て何かを変化させた自分に感づきます。
「休み」に対する考え方、捉え方は人によって様々。折しも労働時間規制の緩和が検討されようとしている現在、働くこと・休むことについてあなたはどのように考えるでしょうか。
『休むヒント。』
作成者
群像編集部編
出版者
講談社
刊年
2024.4