『羊皮紙をめぐる冒険』

作成者
八木健治著
出版者
本の雑誌社
刊年
2024.12

 羊皮紙とは、紀元前2世紀、小アジアのペルガモン地方で考案され、西洋では中世末まで使用されていた、羊・ヤギなどの皮を加工して作った書写材料です。現代の日本では、映画やゲームなどを通して、羊皮紙という言葉を聞いたことのある人もいるのではないでしょうか。
 本書には、その羊皮紙を自宅の風呂場で自作しようと挑戦した、著者の格闘の日々が綴られています。
 2007年、アラビア文字をきっかけに羊皮紙に興味を持った著者は、英語で書かれた作成レシピと出合いました。そして、実際に羊の皮を取り寄せ、そのレシピを頼りに羊皮紙作りを試みたのです。もちろん、一度の挑戦で綺麗に仕上がるわけがなく、彼は試行錯誤を繰り返します。さらに研鑽のため、現在でも羊皮紙を生産している海外の工場を訪ねたり、中世の羊皮紙が管理されている大英図書館へと足を運んで、現物を研究したり、さらには羊皮紙発祥の地とされているトルコのペルガモンも訪れました。すると次第に、彼の作った羊皮紙を買いたいというメールや、講演会の依頼が届くようになります。
 八木氏はこの羊皮紙作りのための研鑽の日々を、仕事ではなく、あくまでも趣味として始めました。モノづくりに対する喜びと情熱によって、彼は世界中を駆け巡り、飽くなき探求を2025年の今も続けています。
 本書は、羊皮紙の作成方法や歴史を知ることができるだけではなく、知的好奇心がどれだけ自分の世界を大きく変える可能性を秘めているのか教えてくれる1冊となっています。なお、巻末には、身近なものでできる羊皮紙のレシピが掲載されています。新たなことに挑むはじめの一歩として、羊皮紙を作ってみるのはいかがでしょうか。