『ひとりあそびの教科書』

作成者
宇野常寛著
出版者
河出書房新社
刊年
2023.4

 幼い日に、ひたすらにおもちゃの車で遊んだり、クレヨンで絵を描いたり、砂場でトンネルを掘ったりと、夢中になって一人で遊んだ記憶がある方も少なくないのではないでしょうか。しかし、大人に近づくにつれ、多くの人は次第に「誰かと一緒に遊ぶ」ことを覚え、あえて「一人で遊ぶ」ことを選択する機会は減ってきます。こちらの本は、そうした「一人で遊ぶ」ことから遠ざかってしまった人に向けて、成長した今だからこそできる「ひとりあそび」をやってみませんか、と提案するものです。
 「ひとりあそび」の例として挙げられているのは、ランニング、身近な生き物探し、小旅行、玩具類の収集、読書、映像作品の鑑賞などです。一般に「遊び」として認識されることは少ないものもありますが、実際に著者がこれらを「ひとりあそび」として楽しんでいる様子が描かれており、こうした行為も「遊び」となりうるのだと気づかされます。
 「ひとりあそび」の利点は、人間同士のネットワークから離れて遊ぶことで、周りの反応にとらわれず、純粋に遊びを楽しみ、自分の世界を広げていくことができる点だといいます。この点については、周りの目など気にならず、ただ遊びに没頭していた幼少期の一人遊びにも通じるものがあるといえそうです。主に中高生をターゲットにして書かれた本ではありますが、紹介されている遊びは、大人の方でも問題なく遊べるものばかりです。本の内容を参考に、学生の方も大人の方も、童心に返って遊んでみるのもおもしろいかもしれません。