『プラットフォーム資本主義を解読する』

作成者
水嶋一憲[ほか]編著 金埈永[ほか]著
出版者
ナカニシヤ出版
刊年
2023.6

わたしたちは現在、スマートフォンやタブレット、パソコンで、アプリケーションを通じてインターネットに接続し、いつでも、どこでも、だれとでもつながることができる社会に生きています。デジタルデバイスはほとんど常にネットとつながっていて、デバイスを持っているかぎり、この「つながり」を断つことはわたしたちにはできません。
 X(旧Twitter)、TikTok、YouTubeなど、インターネット上にある他者と関わり合うことができる場、媒介として存在するプラットフォームは、その利便性からいまやあらゆる場面で利用されています。たとえば地震が発生したとき、何か大きな事件が起きたときや電車が遅れているときなど、わたしたちはまず検索エンジンで情報を探してみたり、SNSをひらいて状況を確認しようとしたりします。プラットフォームはもはや生活の一部であり、社会的なインフラとも言えるほどの地位を確立しているようです。しかしながら、知っての通りこれらは企業(たとえばGoogleなど)が資本主義の価値観に基づいて運営している場であり、運営会社の意向と切り離しては存在し得ません。
 この本では、現代を象徴するこのような現象を「プラットフォーム資本主義」と表現し、さまざまな角度から、タイトル通り「解読」しています。
 たとえばchapter.2では、就職情報サービスについて論じられています。現在、就職活動は、いわゆる「ナビサイト」なしには成立しないといっても過言ではありません。大学生と企業を媒介するプラットフォームは、単に労働力の需給を仲介するだけではなく、それを利用した就職活動が一般的になるにつれ、スキルの標準化や価値基準の画一化など、労働それ自体にも大きく影響していることが述べられます。
 このほか、デバイスやネットワークが与える環境への負荷などについても解説されており、手を伸ばせばすぐに届くところに当たり前のように存在しているプラットフォームの仕組みや影響を理解し、身近な切り口からシステムとの適切な距離について考えることができる1冊です。