『日常は数学に満ちている』

作成者
三谷純著
出版者
山と溪谷社
刊年
2024.12

本書はタイトルのとおり、日常に満ちあふれている数学を紐解いていきます。横書きの本文に、わかりやすい図形や親しみやすいイラストが添えられ、難しい数学をやわらかく表現しているように感じられます。
 第1章では「身の回りの数と形の不思議」が取り扱われています。たとえば、スーパーのチラシにはどの数字が何回登場するかを検証したり、ポン・デ・リングの形を描く関数を紹介しています。さらに、どんな人数のグループでも新幹線の座席に余りなく座れることを証明していきます。普段気に留めずに当たり前に存在していることにも、実は数学が使われていることに気づかされます。
 第2章では、頭で考えるだけでなく「触って作って感じる数学」が紹介されています。紙を半分、半分と折っていくと、その厚さはやがては富士山の高さを超え、さらには月にも届く高さになる、というどこかで耳にしたことがあるような話を実際に計算していきます。計算上確かに42回目には月までの距離(約38万km)を超えますが、実際に紙を折る回数には限界があり、1200mのトイレットペーパーを使った12回がギネス記録であり、42回は到底できそうもありません。
 また、全部で33の話題を通して眺めてみると、対数(log)に関するものが意外と多く、無味乾燥に思える高校数学も、日常にたくさん隠れていることがわかる、と著者はあとがきで述べています。学生の頃、数学という学問が生活の役に立つことがあるのか、将来この数式を使う時がくるのか、と一度ならず思ったことはないでしょうか。そんな少し苦い経験をお持ちの方も、数学が大好きな方も、日常には数学がありふれていることが実感できる1冊です。