『青い星、此処で僕らは何をしようか』

作成者
後藤正文, 藤原辰史著
出版者
ミシマ社
刊年
2024.12

人と話すときは、お互いに向かい合うより、横に並んで同じ方向を向いている方が話しやすいと思いませんか?目線の先に話題となる対象があれば、なおさら話しやすい。本書はミュージシャン・後藤正文と歴史学者・藤原辰史が様々な対象を前にやりとりを交わした記録をまとめたものです。
 たまたま同じ年の同じ日に生まれた二人。まずは、彼らの誕生日である1976年12月2日の五大紙を目の前に語りはじめます。音楽と学問、全く異なる分野で活躍する二人が新聞の記事や広告を眺めながら、選挙から当時の政局、食糧自給率、環境問題、働くことにおける倫理観など、話題は広がります。冷蔵庫の広告をきっかけに「食料を保存できるようになったことが戦争に与えた影響」に言及されるところは専門家ならでは。どの話題も過去を懐かしむだけでなく、現在へとつながる語り口で言葉が交わされる様子が印象的です。オンラインでの講義と対話、上勝ゼロ・ウェイストセンター、書簡へと舞台を移し、対話は続いていきます。
 タイトルに「此処で僕らは何をしようか」とあるように、未来や目の前の問題「を」どうにかしよう、ではなく、地球というみんなの星「で」何をしていこうか、という対話の軌跡をなぞる1冊。言葉の交換、していきませんか?