本書は九つの外国語専門書店へのインタビュー集です。外国語がどのように届けられ、その先に誰がいて、届けるのはどんな人たちなのかを教えてくれます。
選書は顧客の顔が浮かんだものを、と話すのは「レシャピートル」の榎本さん。キャリアを積んだフランス語書籍専門店「欧明社」の閉店を機にオンライン書店を始め、充実のラインナップとSNSでの発信で読者一人ひとりに合った本を届けます。
ロシア語書籍専門店の「ナウカ・ジャパン」から毎月発行されるカタログには800タイトル以上が掲載され、本選びをガイドします。代表の村上さんが半世紀以上作成に携わり、ロシアから中央アジアまで足を運んで培った選書眼が光ります。
スペイン語の児童書を扱う「ミランフ洋書店」には、外国人の親子も訪れます。店主の宇野さんは、日本文学の翻訳本に偏りがちな図書館の蔵書に疑問を投げかけ、原語のリズムや文化が味わえる本を提案します。
創業100年以上の伝統がある中国・アジア書籍の「内山書店」も新規開拓を怠りません。輸入雑貨や民芸品を扱い、即席麺フェアを開催するなど、幅広い層に間口を広げます。
韓国書籍を扱うブックカフェ「CHEKCCORI」のキムさんはイベントを「お客さんとつながれる大きな武器」と捉え、「書籍だけが“本”とは思わない」という言葉には、外国語を届ける様々な形に気づかされました。
近年活況を呈す中国の意外なジャンルや、小鹿の意味を持つ「チェルビアット絵本店」の四方さんが書店を開きたい人におすすめする本、モスクにある書店「キタプチ」で本書編集部が出会った一冊など、紹介したいエピソードは他にも。
本を通して遠く離れた人をつなぐ仕事の醍醐味を改めて知ることができました。
『外国語を届ける書店』
作成者
白水社編集部編
出版者
白水社
刊年
2024.10