「猫社会学」とは、なんだろう。この本を手に取ったのはそんな好奇心からでした。
編者である赤川学氏は、猫好きが高じて「猫と人とのさまざまな関係を言語化するため」この猫社会学という分野を提唱し始めたとし、「猫社会学」を「猫好きの、社会学者による、猫のための社会学」と定義づけています。
本書では、赤川氏を含め、5人の猫好きの社会学者が、猫カフェや猫島、『サザエさん』全7193作品を読み、猫がどのように「愛する家族の一員」として認知されるに至ったかなど、それぞれの視点から猫について考察を述べています。「ひきこもり」診療の第一人者にして精神科医である斎藤環氏との特別対談では猫のもつ可能性について語られています。
ヒトと動物の関係性を研究する新島典子氏は、「猫カフェ」について、客層が「デートスポット」として楽しむ一見客から、自分の「推し猫」に会いに行くといった常連客へと変化した点に注目しています。新島氏が調査を始めた2009年ごろには、里親を募集する猫カフェはほとんどなかったが、近年、里親募集型の猫カフェが増えて、里親と猫をマッチングさせる場としての存在意義が高まってきており、猫と人、人と人との出会いの場へと変化していることなどを踏まえ、人間が猫カフェから何を得ているのか分析しています。
猫好きの社会学者が始めた猫社会学のこれからを期待しています。
『猫社会学、はじめます:どうして猫は私たちにとって特別な存在となったのか?』
作成者
赤川学編
出版者
筑摩書房
刊年
2024.6