『文書館のしごと アーキビストと史料保存』

作成者
新井浩文著
出版者
吉川弘文館
刊年
2024.4

 本書は著者が四半世紀にわたる埼玉県立文書館勤務の期間に発表した論考の一部をまとめられたものである。
 本書収録の各論考は「文書館の役割と機能」「公文書の保存と管理」「地域史料の保存」「修史事業と文書館」「公文書館専門職」「高等学校の授業と文書館」に大別できる。
 「文書館の役割と機能」では文書館の概要説明、文書館施設の立地と構造、収蔵資料、資料の保存対策について述べ、「公文書の保存と管理」にて行政文書の劣化調査と保存環境をとりあげられている。「地域史料の保存」「修史事業と文書館」では地域史料=古文書の保存・公開をめぐる諸問題をとりあげ、保存と利用、修史事業における文書館の役割を提示されている。「公文書館専門職」では文書館専門職制度確立にいたる経緯を述べられている。その成果は2021年元旦に国立公文書館による「認証アーキビスト」の最初の認証に結実した。なお2024年から将来のアーキビストのための「准認証アーキビスト」の認証がはじまっている。「高等学校の授業と文書館」では2022年度から新学習指導要領で設定された選択科目「日本史探求」「世界史探求」「地理探求」での実践例として文書館資料を用いた授業について紹介されている。
 本書の内容は日本におけるアーカイブズの考え方の導入・普及の過程と重なる部分があると感じている。本書を読んでいただくことで、日本のアーカイブズの経緯と現状がつかめると思う。なお、本書にはさらにアーカイブズについて知るための「アーカイブズに関する入門書」が紹介されている。
 本書をきっかけに、広くアーカイブズについて、また奈良県立図書情報館の公文書館機能について興味を持っていただければ幸いである。