『シミュレート・ジ・アース:未来を予測する地球科学』

作成者
河宮未知生著
出版者
ベレ出版
刊年
2018.10

 未来予測というとSF世界のように聞こえるかもしれませんが、社会のいたるところにその成果が溢れています。例えば「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が指摘するように、気温上昇が1.5度を超えると異常気象のリスクが高まります。国の予測によれば、南海トラフ地震や首都直下地震が30年以内に約70%の確率で発生する可能性があります。また私たちが日常的に目にする天気予報も、地球の未来を予測して対処しようとコンピュータ内にもう一つの地球をつくり、シミュレーションを行って得られた成果なのです。
 このシミュレーションの始まりは、1922年にイギリスのルイス・フライ・リチャードソン氏が行った世界初の天気予報とされています。彼の試みは手動のコンピュータで6週間かけて6時間後の予報を出すものでしたが、その後コンピュータの進化とともに、より正確な未来予測が可能になりました。
 本書によると、現在では異常気象や地球温暖化、地震や火山の噴火などが地球に与える影響を予測するために多くの研究者がコンピュータシミュレーションを活用し、「明日は何が起こるか?」「100年後は何が起こるか?」といった疑問に迫ろうとしています。各章ではシミュレーションの原理からはじまり、地球温暖化、古気候、極端気象、エルニーニョ・ラニーニャなど、幅広いテーマにわたるシミュレーションが分かりやすく解説されています。
 さらに、本書は地球の未来を予測することが現代社会において重要であることを強調し、今後より一層シミュレーションの精度が上がると述べています。そして何よりも、地球の未来を予測する地球科学の身近なトピックス等を丁寧に解説しているため、知的好奇心を刺激する一冊となっています。