『おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った:世界ことわざ紀行』

作成者
金井真紀
出版者
岩波書店
刊年
2022.12

 今回取り上げる本のタイトルは、『おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った』。え?猫がかわいそう…、という話ではありません。これは「意外なところに道がある、解決策はひとつではない」という、フィンランド語のことわざです。言語にまつわるおもしろいエピソードが好きな著者が、海外ルーツの人や翻訳家などに会うたびに、ことわざを紹介してもらい、雑誌のコラムに書いていたものを、1冊にまとめたのが本書です。
 タイ語の「表面に振りかけたパクチー」、ズールー語(南アフリカ)の「鼻が邪魔だと思う象はいない」、ペルシア語の「絨毯の寸法に合わせて足を伸ばせ」など、その国独自の食事や生き物、生活習慣が反映されたことわざが紹介されています。中には、バスク語(スペイン)の「チャペラをかぶって、世界を歩こう」、ウルドゥー語(パキスタン)の「水牛の前でビーンを奏でる」、ポルトガル語の「どの豚にも聖マルティヌスの日がやってくる」など、私たちが聞いてもピンとこない言葉が含まれていることも。
 また、ことわざからイメージするものが違っているものもあります。「あなたが風でも、必ず嵐に遭うだろう」ということわざは、「上には上がある」という意味です。嵐といわれると暴風雨を思い浮かべてしまいますが、このことわざはアラビア語で、使用されているサウジアラビアの国土は大部分が砂漠。そんな環境から生まれたことわざだと言われると、砂嵐の景色が見えてくるようです。
 各国の風土や文化に思いをはせ、ことわざの意味を想像しながら読むのも面白いかもしれません。