『動物の絵:日本とヨーロッパ:ふしぎ・かわいい・へそまがり』

作成者
府中市美術館編著
出版者
講談社
刊年
2021.9

 本書は、府中市美術館20周年記念で開催された、『動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり』展(2021年)公式図録で、ふしぎなかわいさの動物の表紙が目を引く一冊です。
 府中市美術館は、過去にも「動物絵画の100年 1751-1850」展(2007年)や「かわいい江戸絵画」「動物絵画の250年」「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」「リアル 最大の奇抜」「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」などの展覧会を通して、江戸時代の様々な動物の絵を紹介してきました。本書では、日本だけでなくヨーロッパの絵画に描かれた動物の絵にも範囲を広げ、相違点や類似点などを解説しており、さらに深く楽しむことができます。ヨーロッパの絵画における動物の役割や象徴としての意味などを知ることにより、その文化や歴史の違いから、日本の動物の描かれ方や受ける印象が変わり、さらに興味深いものとなります。
 特に江戸時代の動物絵画の幅は広く豊かで驚かされます。緻密な描写もあれば、非常にシンプルであったり、愛らしさ満載のものがあったりとバラエティに富んでいます。何とも言えない表情の尾形光琳の虎の絵や円山応挙の子犬の絵、徳川家光公の「ヘタウマ」風の動物画や長沢蘆雪の「ゆるい」子犬の絵など、不思議なかわいさがあふれる動物の絵を楽しむことができます。
 今後、展覧会を鑑賞する際に、新たな視点を得たと思わせてくれる1冊です。