『復原模型で見る日本の歴史』

作成者
坂井秀弥編集
出版者
山川出版社
刊年
2021.10

 

「日本の歴史の流れや人々の生活を知ろうとするならば、その目に直接に飛び込んでくる模型に勝る物はない。」これは、本書の監修者・五味文彦氏の言葉です。復原模型の多くは博物館や資料館に展示されており、目にしたことがある人も多いと思います。展示されている道具などが使われていた時代の人々の暮らしや、建造物、町の全体像などが、模型を見ることで実感できたという経験があるのではないでしょうか。
模型は様々な研究を積み重ね、試行錯誤して作られますが、時代によって基になる資料が違います。古代には発掘した遺物や遺跡しか手がかりはありませんが、文献や絵巻、建造物など、時代を経て研究対象が増えれば増えるほど、多種多様な模型を作ることができるようになります。近世になると、模型を作る素材に事欠かなくなるそうで、紹介されている模型も格段に多いのが江戸時代です。
また、紹介されている地域で一番多いのは、奈良の12か所です。中には奈良市役所に展示されている平城京の模型や、平城宮跡にある第一次大極殿復原建物や平城宮東院庭園といった、実物大のものも掲載されています。
博物館にある模型は、ケースに入っていて近づけなかったり、大きすぎて中央の方が見づらかったりすることもありますが、本書はアップの写真が紹介されている模型もあり、細部までよく観察できます。模型のひとつひとつに、歴史の探求者の研究成果がつまっていることを感じさせられます。