紙の上のタイムトラベル:鉄道と時刻表の150年

作成者
松本 典久 著
出版者
東京書籍
刊年
2021.2

 現在、当館の3階ブリッジでは、資料展示「近代日本の車窓から―150th Anniversary of the Railway―」を開催しています。今回ご紹介するのは、その展示資料の中の1冊です。

 明治5(1872)年9月12日(新暦10月14日)に、日本初の鉄道が新橋~横浜間に開通しました。蒸気機関車が「陸蒸気(おかじょうき)」と呼ばれていた時代です。この明治5年から令和3(2021)年のリニア時代までの鉄道150年史を網羅して解説しているのが本書です。随所に当時の貴重な写真や資料が掲載されており、列車や停車場の様子を楽しむことができます。
 鉄道の歴史は、すなわち時刻表の歴史でもあります。本書は時刻表にもスポットを当て、明治5年の日本最初の時刻表をはじめ、明治27(1894)年に庚寅新誌社から出版された初の月刊時刻表『汽車汽舩旅行案内』など、さまざまな時刻表の表情と変遷を追っています。新線開業が相次ぎ鉄道が飛躍的な発展を見せるにつれて、続々と出版された時刻表は次第に厚みも増し、内容にも工夫が凝らされていったことがよくわかります。また、時刻表から読み解く「スピードの歴史」にも興味をそそられます。東海道本線が全通した明治22(1889)年当時、新橋~大阪間の所要時間は18時間52分でした。それが今や東海道新幹線が東京~新大阪間を最短2時間21分で結んでいるのです。リニア新幹線は時速500km、東京~大阪間を約1時間で結ぶといわれています。鉄道の進化は、日本の未来をどのように変えていくのでしょう。
 令和4(2022)年の鉄道開通150年を記念して出版された本書は、明治から令和にかけての時代を映し出した鉄道の歴史を、存分に味わい尽くすことのできる1冊となっています。

 なお、当館で開催中の資料展示「近代日本の車窓から」は5月29日(日)までです。公文書や貴重書などの歴史資料や、今回ご紹介したような関連図書で、明治から昭和初期にかけての日本と奈良における鉄道敷設のあゆみについて幅広くご紹介しています。