目の見えない白鳥さんとアートを見にいく

作成者
川内 有緒 著
出版者
集英社インターナショナル
刊年
2021.9

 「目の見えない」白鳥さんとアートを見に行く?目が見えないのにどうやって?と思われた方もいるのではないでしょうか。
 本書は、著者の友人である全盲の美術鑑賞者、白鳥さんこと白鳥建二さんとその仲間たちが巡ったアート鑑賞の記録です。
 鑑賞方法は「見える人」である晴眼者が作品を声で描写し、それを聞いた白鳥さんがイメージをふくらませるというユニークなもの。美術の専門家の「正しい解説」よりも、普通の鑑賞者の印象や、そこから想起されたストーリーを聞くのが楽しいと白鳥さんは考えています。
 作品をきっかけに交わされる対話は、時に哲学的だったり、時事問題に関連していたり。文中に登場する作品の多くが図版で掲載され、自分だったらどう描写するだろう、と考えながら一緒に鑑賞し、対話しているような気分で読むことができます。
 「盲人らしくないことをしたい」と美術館に頼み込み、1人で始めた美術鑑賞は、やがて美術館スタッフや周りを巻き込んだ活動へと発展していきました。飄々とした印象ながら、バイタリティあふれる白鳥さんの物語もとても印象的です。
 第6章には、3年前に当館で開催した、興福寺で白鳥さんとアート鑑賞したイベントの様子も収載されています。興福寺の国宝館でどんな発見があったかはぜひ本書で確認してみてください。