本書は、恐竜を中心とした古生物(こせいぶつ)に関する著書を多数執筆し、サイエンスライターである著者が生命史の「ifの世界」にせまり、もしも、古生物が「何らかの理由で滅びなかったとしたら、どのような進化をしたのだろうか?という点に着目し、これまでの研究によって明らかになっている進化の系統、生態等の情報をもとに思考実験を行い、25話の「if(もしも)の進化物語」として綴られている。
三畳紀登場した偽鰐類は今でもワニの仲間として命脈を保っている。現生のワニは水辺の生物だが、中生代には内陸を闊歩する系統もいたという。陸上進出の経験のある偽鰐類が白亜紀末の大量絶滅を乗り越えた偽鰐類は、まっすぐ体の下へのびた四肢は恐竜に似ている。陸型となって地上にいたら新生代の肉食性哺乳類の台頭はなかったか遅れたかもしれない。
新生代に出現したペンギンのライバルはクジラで、特にイルカのような小型のハクジラはペンギンと同じ獲物を狙う競合関係にあったという。「もしもクジラの台頭がなかったらとしたら」というifのその先を想定したもので、その形態は首が長く全長は14mに達し、かつてのクビナガリュウ類を彷彿させるような姿である。
本書中には、絶滅せず、進化を続け、牧羊化した植物食恐竜のケラトプスや馬のように品種改良され、人を乗せるまでに巨大化した犬などがイラスト共に紹介されており、古生物の魅力に出会える本書をお勧めします。