『ひとはなぜ「認められたい」のか : 承認不安を生きる知恵』

作成者
山竹伸二 著
出版者
筑摩書房
刊年
2021.1

 ありのままの自分とは何でしょうか。人には自由に生きたいという欲求があり、一方で他人に認めれられたいという欲望もあります。この自由と承認の狭間で葛藤し、自己を喪失します。これは現代社会を生きる誰もが抱える課題だといえるでしょう。本書は、この認められたいという承認不安を哲学的に考察して、自由に生きる道筋を示します。
 承認不安の原因は、親や友だちといった周囲の人々の評価を過剰に気にして、場の空気を読み、顔色をうかがい、批判されないように、軽蔑されないように、自分の感情を抑え、本当にしたいことを我慢し、自由を放棄して周囲が期待する人間像を演じることにあります。こうした行為を本書では、「空虚な承認ゲーム」と呼びます。このゲームは、幼少期から大人の世界にいたるまであらゆるところで展開されています。自分の本音を抑えて周囲に同調し、偽りの自分を演じ続けていると、当然ありのままの自分でいることもできなくなります。そうすると自己不全感が強くなり、自由を感じられなくなります。しかし、身近な人々の考え方や行動に同調したところで、他人が認めて受け入れてくれるわけではないため、孤独感や承認不安はますます膨らんでいくという悪循環に陥ります。
 本書はこうした自由と承認の葛藤を克服して、自己の喪失という闇から脱却する方法を提示するにとどまらず、子育て・保育・教育・看護・介護などの多様な局面にまで広げて、自由と承認を得られる相互ケアによる共生社会の可能性を模索します。自己を取り戻し、自分の人生を自信と責任を持って生きるための手引きとなる1冊です。