『空中写真歴史図鑑 : 大自然と人類文明の映像遺産』

作成者
イーモン・マッケイブ , ジェンマ・パドリー 著 ; 月谷 真紀 訳
出版者
原書房
刊年
2020.7

 鳥のように自由に空を飛んで、上空から地上を見下ろしてみたいとは、誰もが一度は思うことではないでしょうか。ドローンなどの技術の発展によって、現代の私たちは容易にそういった上空からの写真や映像を見ることが可能となっています。しかし、昔のそういった技術のない時代の人々も様々な工夫をして、空からの写真を撮ろうと取り組んできました。本書はそういった熱意と努力の成果が詰まった一冊となっています。 
 世界で初めて空から写真を撮影したのは、フランス人のガスパール=フェリックス・トゥールナション(通称ナダール)です。彼は1858年に係留した気球に乗り、高度520メートルからパリを画面にとらえました。気球を安定させるために、風のない日を選び係留索をできる限りぴんと張られた状態にするなどの方法で様々な困難を克服して撮影されたといいます。それ以降、気球以外にも凧にカメラを取り付けたり、伝書鳩を使ったりして撮影した黎明期の写真から、ヘリコプターや飛行機、パラグライダーに乗って撮影されたもの、人工衛星やドローンでの写真まで、19世紀から2018年までの約150年におよぶ歴史的な芸術写真や報道写真の数々が約200枚、年代順に収録されています。
 素晴らしい自然や街並、建築物を撮影したもの、震災や戦争による瓦礫となった都市や広島の原爆、9.11、東日本大震災などを撮影した写真など、その年代を代表する厳選された写真群は写真家の思いの伝わる珠玉の作品ばかりです。また、空中写真の歴史はそのまま写真の歴史でもあると著者はいいます。写真や写真家についての説明や索引もありますので、写真史を学ぶ助けにもなる本です。