『My Room : 天井から覗く世界のリアル : 55ヵ国1200人のベッドルーム』

作成者
ジョン・サックレー著
出版者
ライツ社
刊年
2018.3

 人の部屋って、気になりませんか。反対に、自分の部屋を他人に見せるのって、抵抗ありませんか。 部屋を見るとその人の趣味や嗜好、性格がよくわかる気がします。『My Room』を手に取ったのはそんな好奇心からでした。
 著者のジョン・サックレーは若き写真家。2010年から2015年までの6年間に世界55カ国を旅し、18歳から30歳までの若者1200人のベッドルームを撮影しました(新型コロナウイルスの影響で海外はおろか、国内の行き来すら不自由な状況が続く今となっては、信じられないことのように思えます)。本書にはその中から選ばれた84人のベッドルームの写真とインタビューが収められています。
 「伝統衣装を着続ける女性の部屋」「銃のコレクションがある部屋」「刑務所の女性部屋」「歴史的大虐殺から生き延びた男性の部屋」――84人のベッドルームにはそれぞれタイトルが付けられています。差別や格差、残酷な歴史を反映したタイトルも多く、世界の困難な状況を思わせます。しかし、ベッドルームの真ん中に座り、天井につられたカメラを見上げる若者たちの表情は晴れやかです。見上げる、という動作もその晴れやかさに一役買っているのかもしれません。鮮やかな部屋、地味な部屋、散らかった部屋、何もない部屋。そこで生活する若者の顔、服、持ち物。ページをめくるたびに、一人一人違うのだ、困難もあるけれどみんな上を向いて生きていくのだと、しみじみ感じました。
 この本に収められているのはたった84人のベッドルーム、しかも84人は全員若者。世界に暮らすのはその何倍もの、若者だけじゃない人々です。人の、世界の多様さに思い馳せずにはいられない、興味深い一冊です。