『角野栄子エブリデイマジック』(コロナ・ブックス 218)

作成者
角野栄子 著
出版者
平凡社
刊年
2019.8

 人間の日常のなかに不思議が混ざる物語のジャンル―“エブリデイマジック”。ファンタジーの中でも、日常の延長に魔法などの不思議を描いた物語をそう呼びます。本書では、魔女の宅急便やアッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけシリーズなどの作者・角野栄子氏のライフスタイルなどが紹介されています。
 角野氏は1959年、24才の時ブラジルに移民して2年間滞在し、その体験をもとに描いた小説で作家となり、その後童話を出版するようになりました。角野栄子という作家を知らなくても、子どもの頃にアッチのシリーズを読んでいた人、魔女の宅急便の主人公の成長を見届けた人、あるいは原作は読んでいなくてもジブリ映画を見たことがある人など、作品に触れたことがある人は多いのではないでしょうか。
 ページをめくると、日々のアイディアを書きとめたメモや自筆のイラスト、ブラジルなどの旅先の思い出の品、大切な本などの紹介や、幼い頃・移民時代・作家になってからの生活などがつづられており、そこに交差させるように角野作品が引用されています。また、娘さんが描いた絵が載っていると思ったら、その絵がきっかけで魔女の宅急便の主人公キキが生まれた、というような作品の裏話もさらりと出てきます。そこにはなんの特別感もなく、あくまで日常の一部が切り取られていて、彼女の日常と地続きにある作品の世界観=エブリデイマジックが感じられる1冊です。