犬と猫 : ペットたちの昭和・平成・令和

作成者
小林照幸 著
出版者
毎日新聞出版
刊年
2020.9

 本書の表紙には檻に入れられた犬と猫の写真が使われています。著者が取材中(平成後期)に撮影されたそうですが、悲しげで訴えかけているような目の表情をした写真は、見続けることができませんでした。かわいそうという言葉では言い表すことすらできません。 これが現実なのだと突きつけてきます。
 本書は、県動物愛護管理センター所長である公衆衛生獣医師の主人公を通して、引き取られた犬猫の現状と、動物愛護管理センターの歴史や成り立ち・取り巻く問題について語られています。著者は、『ドリームボックス 殺されてゆくペットたち』や『車いすラッキー 捨てられた命と生きる』など、行政による犬猫の殺処分についての著作があり、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の発出等による日常の変化は、人間だけでなく動物の世界にも影響を与えるのではないかという危機感をもって本書を書き下ろしています。
 動物愛護管理センターは、昭和49年の「動物の保護及び管理に関する法律」施行以来、平成12年の改正や令和元年の 「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律」等を経て動物に対する意識や取り巻く環境も、保護から愛護へと昭和・平成・令和の時代を通して大きく変化したことがわかります。
 あとがきによると、表紙の犬と猫は「新しい家族」へ引き取られたとあり、支援団体や関係者による譲渡会等の取り組みによって救える命があることを教えてくれます。
 本書は、人と動物との共生社会の実現に向けて努力すること、ペットとして愛玩するだけではなく自分の手に委ねられた命を守ることの大切さを教えてくれる1冊です。