ほんのちょっと当事者

作成者
青山ゆみこ 著
出版者
ミシマ社
刊年
2019.12

 「当事者」とは誰でしょうか?
障害や病気、貧困などを抱えた人、あるいはその家族でしょうか?
 著者は、そんな「大文字の困りごと」だけでなく、口には出せない「もやもや」や、ふと感じる生きづらさなど、「小文字の困りごと」を抱えた人も「当事者」ではないか、という疑問から本書を書き始めたそうです。
 著者は、日常生活には差し障りない程度の難聴でしたが、自らを障害者とは思わずに生きてきました。しかし、手話教室に参加した際に障害者として扱われたことをきっかけに、誰でも「当事者」になりうると気づくと同時に、これまでの人生での「小文字の困りごと」が、実はその問題の「当事者」としての経験だったと自覚していったのです。
 『「生きる」ということは、「なにかの当事者になる」こと』だと著者は言います。「女だから」「男だから」と差別的な言葉が投げかけられたり、健常者と障害者を線引きしてしまう自分の意識など、自分自身がすでにその問題の「当事者」であると気づけたとき、その問題を自分事として捉えられるようになります。
 コロナ禍の現在、誰しも患者や濃厚接触者としていつ「当事者」になるかわかりません。タイトルのように「ちょっとだけ」でも、自分は当事者だと思って行動してみるだけで、「当事者」の気持ちが想像できますし、いざという時の心構えもできます。そんな想像力が広がれば、誰にとっても生きやすい世の中に変わっていくのではないでしょうか。