『日本全国[〇池]さんぽ』

作成者
市原 千尋 著 
出版者
三才ブックス
刊年
2019.8

 日本には21万もの池があるといいます。人々の生活を潤すために、池は多大な努力で維持管理され、感謝や信仰の対象にもなってきました。しかし現在、全国の池はかなりのペースで減少してきているのだそうです。時代の流れの中で不要になった池が人の手で埋められてしまうことも少なくありません。実際、図書情報館が建っているのは「大池」と呼ばれた灌漑用のため池の跡地です。その一方で、貯水や洪水調節といった従来の機能だけでなく、広い水面を活かした太陽光発電や小水力発電、防災用水機能など池の新しい活用法も生み出されています。
 本書は、七千以上もの湖沼を訪ね歩いた池マニアによる池への愛情がぎっしり詰まった池の図鑑となっています。著者が「ぜひ訪れてほしい」とおすすめする全国の池を厳選し、島池・山池・里池・人造池・公園池・城池・町池・寺社池といった独自の8種類に分類して、自身が描いたやさしいタッチの鳥瞰図とともに紹介・解説しています。
 奈良県からは、猿沢池(奈良市)と明神池(下北山村)が挙げられています。他にも、池の真ん中に森をのせた島が浮いている浮島の森(和歌山県新宮市)や近代化産業遺産である石積み堰体の河内貯水池(福岡県北九州市)など興味深い池が数多く紹介されています。今まであまり知らなかった池の魅力を存分に感じられる一冊です。
 秋の行楽シーズンです。ぜひ本書を手に、池と紅葉の風景を楽しみに出かけてみてはいかがでしょうか。