『5G-次世代移動通信規格の可能性』(岩波新書1831)

作成者
森川 博之 著
出版者
岩波書店
刊年
2020.4

 最近よく目にする5Gという言葉。その正体とはなにか。本書ではこの分野の第一人者といえる著者がわかりやすく解説しています。第5世代の移動通信システムとして注目されている5Gが実現しようとする様々な世界のなかで、大きな特性といえるのが、簡潔にあらわすと4Gまでのサービスの対象は電話、コミュニケーション、インターネットなど人が主な対象でしたが、5Gでは、「モノ」が加わり、まさにIOTと呼ばれるモノを対象としたインターネットの世界が実現されるそうです。
 5Gの3つの特徴としては、「超高速」、「低遅延」、「多数同時接続」。現行速度の1000倍ともいわれる「超高速」、情報のやり取りの遅延時間が1000分の1秒という「低遅延」、
1平方キロメートル圏内に100万台もの端末(デバイス)を接続できる「多数同時接続」を実現させるシステムです。
 このシステムによって自動車などの自動運転、作業現場の無人化、機械の遠隔操作、医療現場における遠隔診療や手術支援、都市の安全を支える広域監視、地方の生産性向上などが実現・実用されるとしています。
 本書では5Gが今後どのように社会や産業に影響を与えていくのかを、5Gまでの通信システムの歴史を振り返るとともに、5Gの背景や技術の解説も交えながら紹介していま
す。また、最終章では様々な可能性を秘めた未成熟で大きな巨人ともいえる5Gに対して、どのような姿勢で向き合えば良いのかを著者の視点でまとめています。
 著者は、「5Gで何ができるのか」ではなく、「5Gで何をするのか」という積極的な姿勢が大切で、異なる視点の発想をかけあわせながら、5Gで何をするのかを考え続けることが重要だ。と結んでいます。