『タネの未来 : 僕が15歳でタネの会社を起業したわけ』

作成者
小林宙 著
出版者
家の光協会
刊年
2019.9

 タネと聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?植物のタネ?野菜のタネ?実はそのタネが危機的な状況にあることはご存じですか?
 本書は、15歳で起業した小林宙さんのタネにまつわる本です。タネをめぐる現状や自身の生い立ち、伝統野菜のタネを残すために起業した理由などが語られます。執筆当時、高校生の小林さんは学業を優先しながら、帰宅後や休日の空いた時間にタネを仕入れたり、自作の無農薬野菜を販売したりしています。そのバイタリティは目をみはるほどです。
 彼がこだわるのは、伝統野菜のタネを流通させて残すこと。その理由は本書に詳しいですが、小林さんが大切にしたいのは食の多様性です。食用のタネ一粒には、これまでの農家さんや種苗農家さんの努力や歴史が詰まっています。その地域に根付いた作物のタネでもあり、地域の食文化の担い手でもあるのです。
 遺伝子組換え食品のタネが開発されたり、種苗農家さんの減少、農業の効率化の動きのためにタネはどんどん種類を減らしています。農耕以前に人間が食用に利用していた作物は約1万種あったのが、20世紀後半には、55科408種にまで減少したという報告もあるそうです。タネがなければ食物はできなくなります。
 小林さんは今後、インターネットでタネを流通させたり、「タネの交換会」を開いたりとまだまだ活動を広げていく予定だそう。私たち自身の食の豊かさを守るために、タネの未来を、この本を読んで一緒に考えてみませんか。