『ドラえもんを本気でつくる』

作成者
大澤正彦 著
出版者
PHP研究所
刊年
2020.2

 藤子・F・不二雄作品に出てくるキャラクターで、22世紀からタイムマシーンでやってきた、ネズミが嫌いでどら焼きが大好きな青い猫型ロボットと言えば、ドラえもんです。では、そのドラえもんをつくるのが夢ですと言われたら、皆さんはどう感じるでしょうか。著者の「私の夢は、ドラえもんをつくることです。」という宣言のような言葉から本書ははじまります。そして、著者はこの言葉を聞いた大人の反応を「多くの人は鼻で笑います。」と書いています。
 本書は、ディープランニング、ニューラルネットワーク等最新のAI技術の説明、読者が感じている疑問、現在のAI技術の課題をドラえもんというフィルターを通して、分かりやすく書かれています。さらに、AI技術だけではなく、現在AIやロボットを作るのに心理学、社会学など様々な分野の専門的知識、技術が必要であることが示されています。特に著者は、人との関わり、人が他者に持つ感情や心について注目し、「人間」についてとことん研究しています。そして、現在のロボットはどのようなことができるのか、ドラえもんにどこまで近づいているのかを知ることができます。
 これらを読むと、「ドラえもんをつくる」という言葉を鼻で笑うことはできないでしょう。ドラえもんが友だちになる世の中が、現実味を帯びてきていることを知ることができる1冊となっています。