『家のネコと野生のネコ』

作成者
澤井聖一・近藤雄生 
出版者
エクスナレッジ
刊年
2019.7

 本書は、身近な家ネコとその起源である野生のネコについて、見開きに写真を並列させながら生態や行動様式などそれぞれを詳細に解説している。

「家と野生の猫つながり」の章では、長毛種のペルシャとその起源とされた野生種についてから始まり、ネコはどこから来たのかなど、猫好きならずとも興味をそそられる内容となっている。それに続けて、ヨーロッパや北米・アジア・アフリカ・中東・南米等の地域別に様々な特色を持つネコについて解説されている。たとえば、すべてのイエネコの祖先種といわれている「リビアヤマネコ」と、すべての家ネコの祖先の姿としてネコの特性を原初に備えた「フォッサ」の写真とを並べて解説されている。また、「アジアのネコ」の章で紹介されているトラは、全身に濃い縞模様を持つ唯一の野生ネコであり、全てのネコ科動物で最大の種となる。そして、野生ネコの生息地の破壊や人間による狩猟などにより、絶滅の危機に瀕している種も少なくないそうである。本書は野生動物を取り巻く問題についても浮き彫りにしており、写真だけを見比べながら見ても美しく楽しいが、詳細な解説は今までに無い視点でネコを語っており、より深くネコについて考えることのできる1冊となっている。

 ちなみに2月22日はニャンニャンニャンで「猫の日」として制定されており、書店や様々な場所でネコ関連の催しなどを見る機会が増えるが、本書を読んで時間を忘れて新たなネコの世界に浸るのも楽しいと思える1冊である。