『夫のトリセツ』

作成者
黒川伊保子 著 
出版者
講談社 
刊年
2019.10

 『妻のトリセツ』から1年、『妻のトリセツ』の読者からの熱いラブコールに応えて刊行された夫編である。

 本書は、人工知能の研究者である著者が自身の体験を織り交ぜながら、「この人と一生を生きる」と決心した女性のために書いた男性脳の「取扱説明書」である。男女の脳は、同じだが、チューニングが違う。男性脳と女性脳の違いを理解すれば、「夫はひどい」の正体がわかるという。例えば、女性が「今日、こんなことがあって」と愚痴をこぼしたとしたら、男性は、否定的な言葉を投げかける。これは、男性が家族にこそ、問題解決型に脳を使うからである。そして、責任ある愛する家族にこそ一番厳しくなるから。しかし、女性は、家族になると様々な状況で恋人時代よりより一層共感を求める。これこそが夫婦のミゾ、「夫はひどい」の正体だという。この男性脳のありようを知れば、夫が不器用で一途で愛おしく思えるのではないでしょうか。

 脳は、イントラクション(相互利用)に興奮するように作られていると述べられている。これは、自分の存在や行動が他者になんらか影響を与え、その反応が帰ってくることで快楽を覚える。このため、自分がいなくても生きていける存在を、人は愛し抜くことができないという。本書中に「あなたがいなきゃ、生きていけない」というフレーズがある。これは、自分にできないことを明確に夫に丸投げする。著者の場合、「電球を替える」、「コーヒーを淹れる」などが挙げられている。それは、優しいことばを言えない男性が、その優しさを伝えるアイテムとなり、それこそが、妻が差し出す「あなたがいなきゃ、生きていけない」なのではないだろうか。そのためには、ほんの少し不器用なふり、弱いふりをしてもいいのでは。と綴られている。何気なく暮らしに根付いたアイテムを思い出し、「二人で長生きしよう」と誓った日々を振り返る。十人十色の人生をかけがえのない人と楽しく過ごすために本書をお勧めします。