『昭和天皇最後の侍従日記』

作成者
小林忍・共同通信取材班 著
出版者
文藝春秋
刊年
2019.4

 平成から令和に変わって7か月経った。この間、天皇、元号や宮中行事について大大的な報道がなされ、関心を持たれた方もおられたことだろう。しかし、その現場ともいえる宮中では実際に何が行われているか、その裏舞台まで知るのは容易なことではない。今から30年前、昭和から平成への代替わりの時、皇居でそれを見届けた人物が日記にその様子を誌していた。それが昭和天皇に側近として仕えた小林忍氏であり、本書はその日記の抄録である。
 この日記、昨年8月に存在が公表された時、大きな注目を浴びている。晩年の昭和天皇が戦争責任をめぐって苦悩している様子が記されていたのだ。しかしそれだけではない。日記には昭和天皇の病状や、崩御からその後の即位儀礼についての所作や所感、宮内庁内の人間関係も忌憚なく記されている。本書は抄録なのでとびとびの記述になっているが、読むだけで昭和天皇をはじめとする宮中や宮内庁内部の様子が窺える。
 時代が変わるという雰囲気があるのだろうか、ここ1,2年で続々と昭和天皇に関する新資料が発見されている感がある。今夏には元宮内庁長官田島道治の「拝謁録」が脚光を浴びた。こうした発見のたびに昭和天皇の実像や宮中の様子が注目されるが、今後もこうした新資料の発見、公表に期待したい。