『宇宙はなぜブラックホールを造ったのか』

作成者
谷口義明 著
出版者
光文社
刊年
2019.2

 ブラックホールという天体の名前を一度は聞いたことがあると思います。この天体に対するイメージは、すごく重いらしいとか、光も引きよせるらしいとか、見えない天体らしいとかではないでしょうか。でも、どうやって出来たのか、いつ発見されたのか、どこにあるのか、なぜあるのかは、意外に知らないのではないではないでしょうか。そんなブラックホールの物語を銀河天文学が専門である著者が綴った本です。
 はじめに、人類がブラックホールをどうやって発見して、誰がなぜ「ブラックホール」という名前を付けたのかから物語が始まります。そして、ブラックホールが信じられていなかった時代から、どのような経緯で認められるようになったのかといったことに物語は続いていきます。
 また、物語が進むにつれて、様々なブラックホールが紹介されていきます。それらの発見の過程を知ると、専門家の人たちが、観測・確認し、仮定・理論を導き出す、そしてまた観測・確認して、また仮定・理論を導き出すという、途方もない積み重ねをしてきたことを感じることができます。さらに宇宙を表す数字で、何億年といった途方もない年月や10の100乗など途方もない数字、1,000ナノなど極小の数字も出てきます。これらを見ると宇宙がいかに広大で、我々が見ている宇宙が宇宙にとって刹那な時間かを感じることが出来ると思います。くわえて、美しい観測結果の写真から、この刹那の時間が、宇宙にとってダイナミックに変化している時であることが分かります。
 最後は、宇宙がどのような最後を迎えるのかを綴り、これからのブラックホールを含めた宇宙観測の展望について触れ、今まで見ることが出来なかったブラックホールを見るための世界規模の計画が始まっていることを述べています。
 ブラックホールや宇宙についての専門的な情報に驚愕し、美しい写真で感嘆し、最後の情緒的な文章で感動する、そんな1冊です。