『アフタヌーンティーで旅するイギリス』

作成者
新宅久起 著・編集
出版者
ダイヤモンド・ビッグ社
刊年
2019.5

 アフタヌーンティーは、19世紀イギリスの貴族ベッドフォード侯爵夫人アンナ・マリアが考案したもので、そのきっかけは、以外にも、内緒のお茶会だったそうです。
 現在も第15代ベッドフォード侯爵夫妻が住まう館ウォーバン・アビー、1840年代前半に第7代侯爵フランシスの妻だったアンナ・マリアは、当時の昼食が軽めで夕食が7時頃だったため、空腹をしのぐ意味で近しい人たちをブルー・ドローイング・ルームに集め内緒で軽食をとっていたのが人気になり、公然の秘密に、やがてそれは、正式な客人へのおもてなしとなっていきました。
 軽食は、お茶と一緒に甘いものが出されていたようですが、実際はどんなものが出されたのかは記録に残っていないようです。今でいう女子会的なものであった様子は、「私は先日(ハンガリーの)エステルハージ王子と私の女性ゲスト8人と共に、5時にお茶をいただきました。彼は黒1点でした。」と、アンナ・マリアが夫の弟にしたためたという書簡が物語っています。当時もおそらく、スコーンやサンドイッチと甘いお菓子が並び、楽しい会話に花を咲かせていたのではないかと想像されます。
 本書では、イギリスの北から南まで各地・各所でのアフタヌーンティーを紹介しています。ページをめくるごとに現れる趣のある建物と整えられた庭園、豪華な調度品とテーブルにセッティングされた三段スタンドに並ぶ可愛らしいお菓子と調和のとれたティーセットの写真は、まるでお茶会に招待されたようなわくわく感が抑えられません。
 貴族のお茶会から始まったアフタヌーンティーを、イギリス各地のホテルや、マナーハウスだけでなく、ちょっと趣を変えたいときは、エリザべス女王も心待ちにしているというロイヤル・アスコットでいただくのも良いかも知れません。出来ることならば、イギリス各地で、美しい庭園や長閑な風景を眺めながら、優雅に、ひと時貴族気分で味わってみたいと思わせる本です。