『eスポーツ論 : ゲームが体育競技になる日』

作成者
筧誠一郎著  
出版者
ゴマブックス
刊年
2018.8

 2020年の東京五輪に向けて、チケットの売出しに申込みが殺到するなど、盛り上がりを見せ始めていますが、その4年後のパリオリンピックにeスポーツが加わる可能性があることをご存知でしょうか。
 eスポーツとは、エレクトリックスポーツの略で、電子上で行われる競技性の高いゲームを指します。シューティングゲームや陣取りゲーム、デジタルカードゲーム、スポーツゲーム、格闘ゲームなどのジャンルがあり、eスポーツはそういったさまざまなジャンルの競技の総称です。本書では、eスポーツの定義や歴史、流行、日本の現状などを解説しています。
 日本ではまだまだ馴染みがなく、多くの人がゲームをスポーツと呼ぶことに違和感を覚えていると思います。著者はその原因が、日本でのスポーツの訳語が「運動・体育」とされていることにあると言います。「スポーツ」とはそもそも勝敗を決める「競技」という意味で、「娯楽・楽しむ」といった意味合いがとても強いものです。著者はまず、「スポーツ」という言葉の定義をとらえ直した上で、「フィジカルスポーツ」「マインドスポーツ」の2つのジャンルがあると紹介しています。フィジカルスポーツは身体を使った競技、マインドスポーツは、囲碁・将棋・チェス・ビリヤードといった主に頭脳を使った競技で、eスポーツはマインドスポーツに含まれます。
 海外では、チェスなどをスポーツとする考え方があり、実際に国際オリンピック委員会では、マインドスポーツの国際競技団体も加盟・承認しています。そうした中にeスポーツも含まれ、2024年のパリオリンピックではeスポーツを正式種目にしたいという要望が出され、競技として採用するか検討されています。著者は、eスポーツが2024年にオリンピックの公開種目、2028年に正式種目になるだろうと述べています。オリンピックでどんな試合が観戦できるのか、今から楽しみです。