『源頼朝 : 武家政治の創始者』

作成者
元木泰雄 著
出版者
中央公論新社
刊年
2019.1

 いい国作ろう鎌倉幕府。この非常に有名な語呂合わせも過去のものとなった。現在の教科書では鎌倉幕府の成立を1192年と教えてないらしい。実際、鎌倉幕府の成立年には数々の説が唱えられている。
 実は本書では鎌倉幕府の成立時期について述べていない。鎌倉幕府を開いた源頼朝の評伝にも関わらず。である。諸説に対して簡単な批評を加える程度である。平氏政権への反乱軍から出発した源頼朝とその軍団が、戦乱の中で政権としての形を整えていってできたのが、鎌倉幕府だと著者は捉えているのではないだろうか。
 頼朝の一般的イメージは冷酷非常な政治家に間違いない。弟義経をはじめとする一族を滅亡に追い込んだことでこのイメージが固定化している。しかし、単に冷酷非情な人物では武士達の指示を得られないのではないかと著者は言う。
 頼朝の生涯についてはこれまでも数多くの評伝が書かれ、歴史の概説書でも度々触れられてきた。本書がどのように頼朝の生涯を描き、どのような人物像を提示するのかは、一読してみていただきたい。