『食育のウソとホント : 捏造される「和食の伝統」』

作成者
魚柄 仁之助 著
出版者
こぶし書房
刊年
2018.9

  皆さんは「食育」と聞くと、どのようなことを思い浮かべるでしょうか。『広辞苑』第七版によると「食材・食習慣・栄養など、食に関する教育。食生活の変化を背景として二〇〇〇年頃から広くいう語」とあります。現代の日本では、伝統的な食材や食生活の推進・体験学習・料理教室など、食育に関する様々なイベントがおこなわれているほか、平成17年には「食育基本法」が世界に先駆けて制定されるなど、官民問わず熱心に取り組んでいます。しかし、今おこなわれている食育は正しいのか、あるいは効果的なものなのか。本書ではそのような問題提起をおこない、本来あるべき食育の姿を示しています。現代日本は、まともな食材を自分の目で見て調達し、その食材を活かす調理をおこなうことができる力=「食力」が無くても生きていける社会であるとのことです。だからこそ食育が叫ばれるわけですが、この食育も歴史的事実や科学的事実に基づかない説では意味が無いばかりか、害になる場合もあります。そこで著者は、食育で流布されている「体に良い」や「伝統食」などの言説に対し、根拠や資料を引用して検証し、「本来の食育ってこんなものじゃないの?」と指摘をしているのです。
 著者はこれまでの著作で、「食べ方が下手になった」現代人を対象に食材の活かし方や保存方法などを紹介してきた人物です。それだけに本書の内容も問題提起だけではなく、食材活用法にもふれているので、それだけでも食育になりそうです。また「科学的事実・歴史的事実に基づいて問題提起した」などと紹介すると小難しい内容をイメージしますが、著者のどこかとぼけた文体も相まって読みやすく書かれていますので、食育について気軽に知りたいと考える方にもおすすめできます。
 自分の「食力」は万全だと考える方も一度読んでみてください。