『明治維新を読みなおす : 同時代の視点から』

作成者
青山 忠正 著
出版者
清文堂出版
刊年
2017.2

 今年は「明治150年」ということで、各地で記念の行事や企画展が開催されています。
 明治維新から150年という歳月を経て、わたしたちはどのような経験を積み、どのように歴史や文化を理解して現在までつないできたのか。そして、維新当時の人々が持っていた時代認識や政治感覚とはどのようなものだったのか。節目の年に、改めて振り返り、その足跡を見つめなおすことも、大切ではないでしょうか。
 そのようなこと考えさせられるのが本書です。本編の各章を読んでいると日本史の教科書に書かれていて理解していたことと、各章に描かれている内容とでは随所で違和感や距離感を感じました。
 それを著者はあとがきで、「19世紀半ばの事象を見るのに、近現代の言語的あるいは文化的な前提を踏まえていてはいけない」と言っています。
 本編では、欧米諸外国との通商条約の勅許と天皇の攘夷に対する認識、佐幕か討幕かに揺れる幕末各藩の動向、戊辰戦争を国際社会の視点で捉えた解説、将軍継嗣問題や薩長盟約の舞台裏、桜田門外の変の井伊直弼や横井小楠、大村益二郎の暗殺、明治国家を作り出すための全国統一政府の成立事情、東アジアとの確執と決別、自由民権運動と大日本帝国憲法成立の背景など、小文にまとめられた盛りだくさんのテーマに触れて幕末と明治維新について同時代の視点を重視した姿勢で書かれています。
 第7章の「龍馬と薩長盟約」では、慶応2年(1866)正月23日、木戸寛治(孝允)が坂本龍馬に宛てた書簡(手紙)を基にして、明治時代以降の歴史的な解釈のうえで「薩長同盟」と言われる盟約や竜馬のはたした役割について解説しています。
ここでは盟約に絡んだ大きな背景として慶応2年(1866)当時、毛利家当主の父子が官位停止の沙汰にあい、公的な政治というシステムに参加できなくなりました。当時の藩主や藩士にとっては、官位停止という沙汰は非常に厳しい措置であり、その復旧が長州にとって最優先に解決しなければならない事項なのだということを著者は述べています。
 全編を通して、時代を動かす動機や背景とその認識が、時とともにいかに変化するかをよく理解させてくれる著作です。