『Option B : 逆境、レジリエンス、そして喜び』

作成者
シェリル・サンドバーグ, アダム・グラント 著
出版者
日本経済新聞出版社
刊年
2017.7

 ベストセラーとなった『Lean in : 女性、仕事、リーダーへの意欲』で「高い目標に向かって努力しましょう」と女性たちに呼びかけたシェリル・サンドバーグは、その数年後に突然夫を亡くします。圧倒的な虚脱感に思考を奪われ、激しい悲嘆に暮れる日々。しかし彼女は、幼い子どもたちの母親として、またフェイスブックのCOO(最高執行責任者)として、その逆境を周りの人々に支えられながら乗り越えていきます。
 事の大小はともあれ、人生において悲劇に見舞われること、災難に巻き込まれることはあるものですが、人はそこからどう回復すればよいのでしょうか。
 本書は、彼女が回復していく中で友人の心理学教授アダム・グラントとともにレジリエンス(回復する力)について学んだことを通じ、最良の選択肢(オプションA)が絶たれても次善の選択肢(オプションB)を最大限活用できるようになることを目的としています。
 二人は「レジリエンスを身につけることは生涯にわたるプロジェクト」と述べ、自己への思いやりが大切なこと、幸せは大きさより頻度が大切なこと、レジリエンスは組織にも必要であり、それを育むにはオープンで率直なコミュニケーションが欠かせないこと、ユーモアにはレジリエンスを高める効果があることなどを、様々な研究結果や実事例を交えながら提示します。読み進めるうちに気づくのは、レジリエンスがとりもなおさず私たちの暮らしを充実させるツールでもあるということです。
 つまるところオプションBとは、セーフティネットというよりもっと前向きに捉えられるものではないでしょうか。拠り所としているものを失ったとき、自分にはまだ○○があると思えるものがあるかないかで、回復の早さと強さが大きく左右されます。◯◯に当たるものは、家族や仕事の場合もあれば、趣味やコミュニティの場合もあるでしょう。人によっては、図書館がそうかもしれません。しかし、むしろ図書館は◯◯を見つける場だと言えますし、やがてそれがオプションAになれば、さらに素敵なことだと思います。