『ジ・アート・オブ シン・ゴジラ』

作成者
庵野秀明企画・責任編集
出版者
カラー
刊年
2016.12

 昨年7月に公開され大ヒットとなった映画『シン・ゴジラ』。私も観ましたが、早い展開、次々に繰り出されるセリフ、圧倒的な映像表現に、リアルタイムを楽しみつつ1秒先を期待してワクワクしている自分と、その情報量に頭がついていけず少し呆れている自分がいました。エンドロールが終わるまで(いや劇場を出た後もしばらくは)、半笑だったように思います。知り合いが何人もリピーターになりましたが、さもありなんと思わせる作品でした。
 今回の一冊は、『シン・ゴジラ』総監督を務めた庵野秀明氏による記録集です。ボリュームはオールカラーで500ページ以上。巻頭言で「特撮映像の面白さを、制作現場の切り取りからも感じて欲しい」と述べ、本作品のメイキングを、スタッフへのインタビューと制作工程の紹介などで明らかにしています。
 そのインタビューは、実に43人を数えます。中でも庵野監督に至っては、約7万文字という圧巻の内容。ページをめくるたびに、妥協を許さない監督らしさが伝わってきます。工程は、造形・物語・映像準備・プリヴィズ・映画美術・撮影現場・特撮美術&現場・VFX&CGなどにカテゴライズし、それぞれの写真やデジタル画像のほか、イメージ画やメモといった手書き資料も掲載しています。新鮮なのはプリヴィズ(プリ・ヴィジュアリゼーションの略)で、これは、映画の制作前に簡易な映像を作って視覚化するシステムのこと。例えばさまざまな街並みを写真から3DCG化し、そこにゴジラのCGを加えることで、建物との対比や効果的な見せ方などをシミュレーションすることができます。監督によれば、プリヴィズの活用が作品の完成度に大きく貢献したそうです。
 本書からは、特撮映像の面白さを感じることはもちろん、映画鑑賞時には解けなかった謎や隠れた設定も知ることができます。また、巻末には公開時の広告やタイアップ企画などが掲載され、さらに別冊は完成台本となっており、映画の追体験もできる一冊となっています。