『ニセモノ図鑑 : 見るだけで楽しめる! : 贋造と模倣からみた文化史』

作成者
西谷大 編著
出版者
河出書房新社
刊年
2016.10

 ニセモノと聞けばどのようなイメージを持たれているでしょうか。大抵の人はニセモノを、無価値なものと考えていることでしょう。しかし、単にニセモノと言っても「フェイク」のように人を欺く目的のニセモノがある一方「レプリカ」のようにホンモノの代用品として役立てられているものもあります。本書は、ニセモノにも意味があるとの視点から行われた国立歴史民俗博物館での企画展示「大ニセモノ博覧会」の内容を再構成して書籍化されたものです。
 では、ニセモノにどのような意味があるのでしょうか。本では「ニセモノとおもてなし」「必要な道具としてのニセモノ」「オリジナルを超えた価値をもったニセモノ」「創造されたニセモノ」「博物館とニセモノ」の5つのテーマで章立てをしており、それぞれニセモノの価値や役割を、事例を挙げながら紹介しています。例えば昔の宴会では、座敷を書画骨董で演出し、家の格を自慢することが重要でした。その為にはニセモノでも名の通った美術品が必要であったといいます。この場合ニセモノの書画骨董は地域社会で生きていく為の必需品であり、その家の歴史が刻まれた一品でもありました。また家の由緒などを捏造した偽文書(ぎもんじょ)が数多く作られていますが、詳細に分析することで当時の人の心性を研究する重要な資料となりえます。
 その他、ホンモノが存在しないニセモノも取り上げられています。例えば人魚のミイラです。国立歴史民俗博物館は「大ニセモノ博覧会」の為に人魚のミイラを作りました。このミイラ「存在しない人魚」という意味ではニセモノですが、ホンモノと同じ製法で作られた「ホンモノのミイラ」ということも出来ます。はたして人魚のミイラにはどんな意味があるのか・・・。ぜひとも考えていただければと思います。
 本書を読めば、無価値でつまらないと思っていたニセモノも、たちまち魅力的なものに見えてくると思います。特に骨董品を収集されている方、家にある美術品がニセモノかどうか気になっている方は一度手に取ってみてください。