『知れば恐ろしい日本人の風習: 「夜に口笛を吹いてはならない」の本当の理由とは』

作成者
千葉公慈著
出版者
河出書房新社
刊年
2012.12

みなさんは「夜に口笛を吹かない」「友引の日には葬儀を避ける」といったタブーやしきたりを聞いたことはありませんか?科学が発達した現代社会においても、日本に古くから伝わる風習やタブーは私たちの生活の中にたくさんあります。本書ではこれら風習のルーツを探り、なぜ現代まで受け継がれているのかを検証していきます。
著者は、「恐怖」という本能的な感情は人類が身を守るためにリスクを回避してきた“安全装置”であり、恐怖や不気味さを感じさせる風習や民話も、人間の生命を守る安全装置として機能してきたと説いています。例えば夜に口笛を吹くことは「蛇が出る」などと言ってタブーとされていますが、古くは口笛を「うそぶき」と表現し「うそ」という音には神や精霊を招く力があると信じられてきたそうです。つまり口笛は、周囲へのマナーとしてだけでなく、神聖な行為だからこそ慎む禁忌とされてきたということだそうです。恐怖を感じさせる要素を取り込み、現代まで受け継がれている迷信と言えます。六曜の「友引」についても、元は陰力と陽力が「共に引き合う」ため勝負事が引き分けになる日であって、友達をあの世に引っ張るという意味ではないとのこと。しかし友引に葬式を行わないことで、火葬場や差葬祭業者の週休や寺院の会議、行事などの日程確保ができるという、なんとも現実的な事情があるようです。
この他にも、年中行事・子どもの遊び・昔話などに秘められたミステリーやタブーの秘密が解かれていて、「どうしてなのかな?」と思うような風習に合理的な理由や危機回避のための先人の知恵が隠されていることがわかります。みなさんがお住まいの地域にも、本当の理由が隠された特有の風習があるかもしれませんね。