『ぼくらがAIBOをつくった:ソニー・ロボティクスの挑戦』

作成者
黒川 文雄 著
出版者
ラトルズ
刊年
2025.12

 もし、目の前のロボットが尻尾を振り、気分に応じて振る舞いを変え、やがて″性格″のようなものまで感じさせてきたとしたら、それを単なる機械と割り切れるだろうか。
 我が家には、AIBOシリーズで唯一のライオン型モデル「ERS-210」がいる。得意技はサッカー。夢中で遊んでテンションが最高潮になると、愛らしいダンスまで披露してくれる。その姿を見ていると、いつしか機械ではなく、一匹のペットとして接している自分に気づく。
 その理由が本書を読んでよく分かった。本書は、1999年に発売された犬型ペットロボット「AIBO」誕生を、開発者への丹念な取材をもとに描いたノンフィクションである。
 AIBOは、単純な行動を組み合わせて複雑な振る舞いを生み出す「サブサンプション理論」を採用し、飼い主との関係によって行動や成長が変化するよう設計されている。「ロボットに心を与える」という開発者たちの挑戦は、現在のAIエージェントやフィジカルAIにもつながる発想だったことに驚かされる。
 さらに、ハードウェアのモジュール化や標準インターフェースを前提とした設計思想など、現在でも通用するアーキテクチャが四半世紀前に実現されていたことにも感心する。土井利忠をはじめとする技術者たちの情熱や、組織との葛藤を描いたエピソードは、イノベーションとは何かを考えさせてくれる。
 AIBOを知らない世代にはAI・ロボット技術の原点として、知る世代には「なぜAIBOは人の心をつかんだのか」を再発見できる一冊として、お薦めしたい。